緊張の連続だった。カエールとアリエ、セルフ、そしてバナビは毎日のように話しあった。
予測の中で最悪の事態は、一週間の内にエルス港にヒューマンとエルフの連合軍が
迫ってくることだ。残念ながら、これは今まさに起ころうとしている問題である。
「今の状況を乗り越えるための最も重要な案件ですが、うまく解決できたとしても
今後のことを考えると先行きは暗いですね…
リマからは傭兵の契約を破棄するとの連絡が届いています。」
「現状では仕方のないことでしょう。リマの為にカイノンを放置するわけにはいかないでしょう。
契約のことも全ては生き残ってからです。」
バナビの話にセルフがぶつぶつと話した。
アリエは心配そうな口調でカエールに聞いた。
「リマとイグニスは本当に戦争になるのかな…」
「さあ…リマに派遣されていたハーフエルフは全員カイノンに戻っているから、
リマがイグニスに戦前布告をするのは難しいのではないかな…
デル・ラゴスやヴィア・マレアに援助を要請するかもしれない…
今は私たちの問題が一番深刻だ。」
「計画通りに準備は整っていますか?」
バナビの質問にカエールは頷いた。
「リマにいたハーフエルフは、カイノンに戻りました。
実戦経験が豊富な兵士たちなので、特に訓練はいらないと思います。
連合軍が来るとしても、多分我々の実力を過小評価しているので、兵力は少数ではないかと思います。
でばなをくじく事が出来れば、プライドを守るため、彼らは静かに解決をしようと考えるでしょう。」
その時ドアをたたく音がした。
警備兵が巻物を届けにきた。
巻物を開いて読んだバナビの顔に笑顔が浮かんだ。
「何にでも解決の道はあると聞いたが、今の状況がそれです。」
「何と書いてありましたか?」
「ドラットから、エルフとの戦争に手を貸したいとの提案がきました。」
「ジャイアントが私たちの力になると?」
セルフが信じられないというような表情でバナビを見ていた。バナビが頷いた。
「ジャイアントが力を借してくれるのなら、エルフとヒューマンもそう簡単には攻撃を仕掛けてはこられないでしょう。」
アリエが喜びながら話した。
カエールだけがまだ浮かない表情で首を横に振りながら話した。
「ジャイアントが今すぐ支援軍を送るとしても、彼らが着くまでは10日はかかる思います。
我々の予測によると、連合軍がカイノンに着くのは今晩です。
戦争は避けられないでしょう。」
「あ…」
カエールの説明を聞いたアリエはがっかりした様子だった。
「しかしジャイアントが私達に支援軍を送ったことが知らされれば、
連合軍も私達に平和的な解決を持ちかけてくるかもしれません。
戦争を避けることは出来ないかも知れませんが、少なくとも被害をおさえる事は可能でしょう。」
‘もしくは、全大陸が戦争に巻き込まれるか…’
カエールは、ひとり心の中でつぶやいた。