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第九章 運命の渦巻 第12話 10.06.02


 

緊張の連続だった。カエールとアリエ、セルフ、そしてバナビは毎日のように話しあった。

予測の中で最悪の事態は、一週間の内にエルス港にヒューマンとエルフの連合軍が

迫ってくることだ。残念ながら、これは今まさに起ころうとしている問題である。

 

「今の状況を乗り越えるための最も重要な案件ですが、うまく解決できたとしても

今後のことを考えると先行きは暗いですね…

リマからは傭兵の契約を破棄するとの連絡が届いています。」

 

「現状では仕方のないことでしょう。リマの為にカイノンを放置するわけにはいかないでしょう。

契約のことも全ては生き残ってからです。」

 

バナビの話にセルフがぶつぶつと話した。

アリエは心配そうな口調でカエールに聞いた。

 

「リマとイグニスは本当に戦争になるのかな…」

 

「さあ…リマに派遣されていたハーフエルフは全員カイノンに戻っているから、

リマがイグニスに戦前布告をするのは難しいのではないかな…

デル・ラゴスやヴィア・マレアに援助を要請するかもしれない…

今は私たちの問題が一番深刻だ。」

 

「計画通りに準備は整っていますか?」

 

バナビの質問にカエールは頷いた。

 

「リマにいたハーフエルフは、カイノンに戻りました。

実戦経験が豊富な兵士たちなので、特に訓練はいらないと思います。

連合軍が来るとしても、多分我々の実力を過小評価しているので、兵力は少数ではないかと思います。

でばなをくじく事が出来れば、プライドを守るため、彼らは静かに解決をしようと考えるでしょう。」

 

その時ドアをたたく音がした。

警備兵が巻物を届けにきた。

巻物を開いて読んだバナビの顔に笑顔が浮かんだ。

 

「何にでも解決の道はあると聞いたが、今の状況がそれです。」

 

「何と書いてありましたか?」

 

「ドラットから、エルフとの戦争に手を貸したいとの提案がきました。」

 

「ジャイアントが私たちの力になると?」

 

セルフが信じられないというような表情でバナビを見ていた。バナビが頷いた。

 

「ジャイアントが力を借してくれるのなら、エルフとヒューマンもそう簡単には攻撃を仕掛けてはこられないでしょう。」

 

アリエが喜びながら話した。

 

カエールだけがまだ浮かない表情で首を横に振りながら話した。

「ジャイアントが今すぐ支援軍を送るとしても、彼らが着くまでは10日はかかる思います。

我々の予測によると、連合軍がカイノンに着くのは今晩です。

戦争は避けられないでしょう。」

 

「あ…」

 

カエールの説明を聞いたアリエはがっかりした様子だった。

 

「しかしジャイアントが私達に支援軍を送ったことが知らされれば、

連合軍も私達に平和的な解決を持ちかけてくるかもしれません。

戦争を避けることは出来ないかも知れませんが、少なくとも被害をおさえる事は可能でしょう。」

 

もしくは、全大陸が戦争に巻き込まれるか…

 

カエールは、ひとり心の中でつぶやいた。

 

 

第9章13話もお楽しみに!
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